*TGF2021*
 
前書き

TGF2021お疲れさまでした。

前年に続き参加させて頂きましたが、今回も500を超える作品が集う大盛況でしたね。その中から私の作品を見つけてくださり、また遊んでくださった方、まことにありがとうございました。

ティラノフェスはコメントのレスポンスが活発で、またそうしたやり取りを楽しめるのが魅力だと思っているので、今回「玉虫色のIMPRESSION」では、一言でも充分なものになるコメントのしやすさや、コメント自体を利用した仕掛けなどを考えた作品となりました。

一番書きにくい最初に感想をくださった菊島姉子さん、そしてスポンサー賞をくださった富井サカナさん、本当にありがとうございました。スポンサー賞、夢とか表示バグじゃないかと思って次の日も確認したけど、ちゃんとあって良かったです。

兄と妹のなぞなぞ遊び!」は、実は初出が2016年なので出すか悩んだのですが、遊びやすくてコメントもしやすいかな、と出すことにしました。結果、多くの方に遊んでもらえて、更に実況まで頂けたので、出して良かったな、とありがたく思っています。

作者としては「戦犯」みたいなクソコメでも「それは食べられません!」とダイヤを返すくらいのつもりでいました。気軽にね。ちなみに、最初のなぞなぞで「あんパン」とか「レーズンパン」とか入れた人、どのくらいいるんだろうね。わざわざ食べれるパンは入れないよね。

今回はいろいろあって、あまりプレイできませんでした。多分30くらい。拍手ばっかり押しといて全然読めてないの申し訳ないです。特に長編は全く読めていませんが、気になる作品はたくさんあるので、また時間を置いてプレイしたいと思っています。絶対に面白いのは分かってますし。

以下、個別にプレイした作品のノベコレに書かなかった感想などを書いています。否定的な部分も少なくないので、見る方は念のために心の準備をお願いします。

また、上部のタイトルで作品にリンクしています。このページからは「玉虫色のIMPRESSION」です。良かったらプレイしてね。

 
METORY
▶感想

第3回新人フリーゲームコンテストのグランプリ作品ということで、プレイ前から楽しみにしておりましたが、その期待を裏切らない作品でした。面白い。

プレイ時間が1時間程度と短い割に密度が濃くて、とにかく満足感が高かったです。グラフィック面でも珍しい3Dのキャラクタが使われていて新鮮な気持ちでプレイできますし、スマホや改札などUIの使い方やシナリオ選択の画面構成に雰囲気があり、没入感が高いのもお見事です。

こうした複数人のキャラの過去を掘り下げながら進む物語は、とにかくバランスを取るのが難しい印象です。物語の流れに乗せて面白くすることの難易度が高いので、それができていることに感服しています。

また、感想にも書きましたが、キャラクタの好感度の扱いが抜群に上手いので、読んで参考になる方も多いのではないでしょうか。

個人的にバッドエンドに直行するエンドがあまり好きではなくて、分岐を作るのであれば、電車から降りた後もそれなりのエンドを見せてくれたら納得感は得られたのかなと思います。

あと河童か人面犬かで分岐するのは納得がいかない! どっちも大差ないと思う(笑

今気づいたけど、これタイトルは「メトロ+メモリー」かな。次回作も楽しみです。

 
RiddleRoom
▶感想

「ウミガメのスープだ!」と軽い気持ちでプレイしたら、予想を上回る面白さでした。単に謎を解くだけでなく、それが物語に関わってくるという作りが非常に好みです。あとムノーちゃんが可愛い。

遊ぶ人は1周で終わらず、ぜひ最後まで! 感動が待っていますよ。

私は作者さんはガチのウミガメユーザーだと思っていて、1問目はこれですよね。とても印象的なスープだったので覚えています。

 
リードマインド
▶感想

特殊能力あり、イカサマありのギャンブル。勝負事のハラハラ感はやはり良いものです。

テーブルにカードを並べて勝負のルールを説明してくれる臨場感。ルールを把握して攻略法を考える中に、プロのマジシャンらしいイカサマや、能力の発動条件をどう満たすか、相手の能力は何かと推理する要素が絡み合います。更にキャラのバックボーンなどのエッセンスも現れて、物語の着地点が見えなくてワクワクしました。

とにかく隙のない優等生な作りなので、誰が読んでも楽しめると思います。

 
雨にして人を外れ
▶感想

モノクロのビジュアルが印象的な作品です。セーラー服で黒髪ロングのミステリアスな先輩って、グッとくるものがありますよね。今見たら少年は夏服で先輩が冬服と、既に異質感が出てますね。見逃していた。

こちらも第3回新人フリーゲームコンテストで優秀賞の作品で、楽しみにしておりました。

プレイ感覚としては、仄暗い雰囲気が非常に良い。それから特に終盤に出てくる飛び抜けて美しい描写が本当に堪らない。

惜しいのはやはり、序盤でもっと読者に物語の方向性を示すべきだったように思います。基本的に描写が淡白で、二人の感情や物語の目的が見えないので、素直に入り込んで楽しめないのが勿体なく感じます。

 
穴の中
▶感想

往年のサウンドノベルを想起させる作品でした。古の青いシルエット!

感想にも書きましたが、この手のホラーのお手本のような作品です。巨大な穴という異物から起き始める異変、そこから元凶に至るまでの流れが本当にスムーズでストレスが一切ありません。文体も軽やかで、恐怖・笑い・考える箇所の緩急や転換のテンポが非常に良くて、心地よく読めます。

とにかく見た目通りの安心感があるのは良いことですね。期待を裏切られないので。

ちなみに、この手のシンプルなタイトルはエゴサで困るぞ、というのは老婆心。

 
スクールシャーク
▶感想

B級サメノベルの銘通り、とても「らしい」作品です。いきなり学校に現れた浮遊するサメが人を丸呑みする出だしから、読み手の期待通りの興味を引いてくれるので、退屈せずに読めました。

エンタメに振って書かれているので、難しいことを考えずに読むのが吉です。

 
ありすえすけーぷ
▶感想

もはや説明はいらないかとも思いますが、謎解き×脱出ゲームの「ありすえすけーぷ」です。「よーし、謎解きするぞー!」と意気込んで挑戦するのが良いですね。たぶん、どうにもならずに時間切れになりますから。そこからが本番です。

仕掛けが判明した時のやられた感が半端ないです。難しい謎もありますが、攻略があるので参考にしましょう。

ところで、ちょっと「うーん」と思うようなところもあって。例えば折角フルボイスなのに、しっかり聞いていたら時間切れというのは、やっぱり勿体ないなぁとか思うわけです。あと15歳女子が繰り出す直球の下ネタって、純情な男性諸氏は割と引く。

プレイ中、体育館に行けるならその途中で花を摘めないか、とは少し思いました。なんか突っ込みがあった気もするけど。

 
タイトル未定
▶感想

「片恋スターマイン」のめっちゃ長い感想を見た時から、この方の書く作品を楽しみにしておりました。あの感想は解像度が高すぎた。

「書いてあることが分かるのは普通の文章、書いていないことまで分かるのが良い文章」と言われますが、この作品を読んでいて、そのことをまざまざと感じました。直接には書かれていない心情や距離感が見えてくるのはすごいことです。自分には絶対に書けない。

また、感想のほうにも書いていますが、最初に主人公がやらかしたことが提示されるのに、そのことには触れずに物語が進んでいきます。それなのに、もどかしさを感じずに読み進めていけるのが本当に不思議でした。

次回作もとても楽しみです。

 
イマジナリーフレンド
▶感想

某所でも推薦されていたので楽しみにプレイ。個人的にすごく衝撃を受けた作品です。

拙作「幸せな毎日を夢見る」が「夢で見たことを現実で再現して成功していく」という内容で、序盤にテストで高得点を取る流れも同じだったのです。その際、自分ではあれ以上の着地点が見出せなかったのですが、

まさかこんなにも綺麗に落とすことができるのか、と衝撃でした。何をどうすれば、こんなにも爽やかな友情の物語になるのか。怪しかった要素が一転して昇華される鮮やかすぎる転換に舌を巻きました。

この方の作品は他にもいくつかプレイさせて頂いていますが、どれも要所を押さえた作りなので安定感と安心感があってお勧めです。どの作品もちゃんと面白いので。

 
雨音と自動人形 結(むすび)

昨年の「風待ち人 夢追い人」の方の新作ですね。前作がとても好きで、こちらも第3回新人フリーゲームコンテストの優秀賞ということで、楽しみにしておりました。

開始画面のアヤちゃんの起動とか、バス停にタイトルが表示されるタイトル画面の演出とか、期待を煽ってくれてすごく好きでした。オープニングムービーや、キャラクタに当てられたボイスなども、クオリティの高さがそのまま内容に直結している印象です。ただ、ボイスに関しては、ここまで来たら雪村さんにもほしかったかな、とは思います。

疫病で文明が衰退した世界、アンドロイドであるアヤちゃんの存在、そして封じ屋という雪村さんの仕事など、興味を惹かれるたくさんの設定で物語が形作られています。が、これは気になる点とも重なっていて、それらの設定が充分に語られておらず、単なる舞台装置になってしまっているんですよね。

文明が衰退した世界で人々がどのように生活しているのかとか(それこそ美月ちゃんがいるから親を絡めて描写できたはず)、雪村さんが行う封じ屋としての仕事ぶりとか(これだけで一篇書けるだけのポテンシャルはあると思います)、興味がそちらに流れてしまいました。しかし、本編の中心で語られたのは雪村さんとアヤちゃんの関係なので、これは書きたい内容に対して設定が大きすぎたのだろうと思います。

ついでに言えば、序盤でアヤちゃんに記憶を渡すという目的が提示されるのですが、これは早々に拒否されて頓挫します。この時に拒否する理由を追及しないことで物語が方向を見失ってしまっていて、ここで少し損をしているように感じました。

 
死と月は寄りそって眠る
▶感想

死生観という骨太のテーマを持った作品でした。

重いテーマやファンタジーゆえの説明の多さなどもありますが、全体的に読みやすく、特に中盤以降は最後まで一気に読んでしまう力があります。

年齢も性別も立場も、何もかも違う二人が出会って、同じテーマの答えを求めながら交流する。プレイ時間はさほど長くありませんが、出会いと変化、そして別れまで描かれているので、読み終わることには大きな満足感がありました。

殊更にエンディングの美しさが際立っていて、ここでの感動は相当なものでした。プレイ時間も1時間少々というところですので、テーマにピンと来たら読んでみることをお勧めします。

が、こうしてしっかりと書かれた作品だからこそ、妙なチグハグさが目に付いてしまったのも事実です。

開幕、モルスさんは奴隷に「何のために生きるのか」と問いますが、自我を持って生きることのできない奴隷がその答えを持っているかは疑問です。「何のために生きるのか」という問い自体、かなり贅沢な悩みですよね。生きられる保証があるから「何のために」という高次の考えが生まれるわけで、そもそも生きられる保証がなければ考える余裕もないように思います。

「ツルギがあれば何でもできる」も、モルスさんはそれが正しい手順でないことは分かっているはずで、じゃあ何でそんな教え方になったんだ、とやや疑問に思いました。不必要にモルスさんの頭が悪く見えてしまった形です。

一番大きな疑問が出てきたのはルナちゃんで、食事や風呂の話になるとモルスさんの言葉も聞かずに外へ駆け出します。奴隷であった彼女が、なぜ主人を無視して行動できるんだろう。身勝手な行動に罰はなかったの? 勝手にどこかに行くなんて、最悪殺されると思うのだけれど。

「自分の行動を自分で決定できる」という点において、彼女は現代の被虐待児よりも遥かに恵まれていたことになります。まあ奴隷も資産なので、そこまで酷い扱いは受けていなかった、という話もありますが。

他の方の感想を読んでも、あまり気にされていないようですが、自分は気になってしまった箇所です。ルナちゃんの境遇なら、絶対に学習性無力感は外せないと思うのですよ。

 
ある日、天使が楽園から落ちてきた。

Live2Dで立ち絵が動く! 立ち絵の時点で設定通り、ちゃんと末那ちゃんのほうが太いんですよね。欲を言えば頬もふっくらしていてほしかったけど。水着のスチルでは気になるお腹をボールで隠すファインプレーです!

末那ちゃんがとても魅力的なので、攻略ルートも欲しかったです。というか、一途で健気な末那ちゃんこそ報われてほしいと思ってしまうのは、作品の方向的にやや失敗だったのでは。それと、いろんなタイプの毒親が出てきますが、そのせいで気持ちが分散されてしまうというか、空花ちゃんだけを助ける理由にならないのが勿体なく思います。

ちなみに、これは本作が悪いわけでは全くないのですが、トゥルーエンドの設定が昨年プレイしたある作品とそっくりで驚きました。わざとじゃないのが分かるだけに尚更複雑な気持ちになって、ちゃんと面白いのに消化不良に陥ってしまいました。そして、こちらでも愛より執着を感じてしまったわけで。主人公が自分の気持ちに気付いていないという背景も相俟って、助けること自体が目的になってしまっているように感じた次第です。

 
白い日傘とアンデッド

これ、作りがすごく勿体ないと思うんですよ。冒頭でホネ子ちゃんの望みが何なのかが読者には分かってしまうから、主人公と読者との間で断絶が起きてしまう。そうすると、海に行きたいと言いながら山に行ったり遊園地に行ったりするような状態になるので、読み手の求めるところに物語が進まない事態に陥るんです。

例えば序盤で「さっさとくっついて成仏させようとするけど失敗する」みたいな展開でも突っ込んでおけば「まっすぐ目的地に向かってもダメなんだ。それはなぜ?」と展開できるのですが。

とはいえ、この作品の本領はバッドエンドだとも思います。上記の理由でグッドエンドは見えた結末なのですが、バッドエンドが胸に迫る姿を見せてくれます。

特にひまわり畑で静かに消えている姿は本当に悲しくて堪りませんでした。

ちなみに、上で書いた作りの勿体なさは、昨年の「でじゃびびっど!」でも感じました。夢と現実が交錯する話は夢が事実だと読者は理解しているので、作中でここに触れられるまで物語が始まりません。そこまでの内容を前置きにしてしまうのは、シンプルに勿体ないです。

 
ファントムゾーン ダイモンズ

昨年の「ファントムゾーン クリプトファシア」の関連作。前作と比べると、序盤の引きが弱かったかな、と感じました。前作の影響で舞台設定が見えてしまっているから、というのもありますが。

今回も完全版を有料で販売するのだろうな、ということで、読んで感じたことをつらつらと書いておきます。

物語を起承転結で考えた時に「起」で失敗している印象です。冒頭の事件が単発で、物語の主軸に繋がっていないために、物語として何も起きない期間が長いのです。読んでいて、自分が「起」だと感じた最初の変化は、終盤のオルカちゃんがいなくなるところでした。冒頭での先輩の親戚が殺される展開は、もっと活用できたように思います。