*MEMO*
 
幸せな~の解説記事2021/03/12

出すタイミングを完全に逃した「幸せな毎日を夢見る」の解説記事です。プレイ後に、もしよろしければどうぞ。念のために内容は閉じています。

 本作はいわゆる「どんでん返し」ものです。見え透いたどんでん返しを読んだ時に虚しさを感じて、自分ではそれを超えられるかを試してみました。仕掛けはシンプルに「真実とは別のものだと思わせる」方法を取っています。具体的には、フィクションものとして物語を展開して、現実の話としてオチを付けています。

 未来予知して現実を書き換える。そのことに充足して過ごす。でも廻船が来てから上手くいかない。予知夢も見れない。なぜだ! ……という疑問に「上手くいかないのは当たり前だよ。そんな夢みたいな話はないんよ」と答えを出しました。

 納得できるだけの要素は出している、主人公が読者を騙さない、という点でフェアにはしているつもりです。とはいえ、騙しているのには違いないですし、テストの描写や茂家と付き合う流れには気持ち悪さもありますので、評価は読み手の意識にかなり依存していると思います。

「夢オチかよ!」となった方は、作者の実力不足にございます。夢オチで全部なかったことにするというこの物語自体が、自分の行いがなかったことにされる「出臼と廻船」の構図なのです。

 自分が面白いと思ったものの詰め合わせです。オリジナリティなど知らん。

 後半の、どうやっても助けられないループ的な展開は「STEINS;GATE」や「紫色のクオリア」そのままですし、「前半で世界を描いて、後半でルールを覆す敵を出す」という展開は「PSYCHO-PASS」そのままです。

 話の構造自体も……作品名を挙げると向こうのネタバレになるので伏せますが、「病院・天使・猫・カラスのアレ」とか「妹がトカゲのアレ」とか、そのままです。

 文章が硬いのは、序盤の凡庸な展開を「これだけ書ける人なんだから」と思ってもらえたら、という考えです。しかし、チグハグではあるので、逆に振り落とされた方もいるかもしれません。

 ちなみに、この文章の書き方も「図書館戦争」辺りの模倣になります。地の文がしっかり書かれていると、台詞から心情を推量する手間が掛からないので、却って楽に読めるという持論です。

 主人公は「人を殺す」という禁忌を犯しますが、ここはかなりセンシティブな部分なので、フォローには気を遣いました。作中での命を軽くして、動機を掘り下げて、現実ではしっかり重く、と。モラル面で気味の悪さが出ていなければいいのですが。

 タイトル画面のファンタジックな紫色の空は朝焼けのイメージで、つまりは夢から覚める間際。なので、目が覚めると都会の青空になります。クリア後にタイトル画面が変わるようにしたら良かったな、とは後で思いました。

 夢と現実とで背景を写真とイラストで切り替えていますが、実は曲も違っていて、最後に覚めるまで、夢の場面では同じ曲が流れています。気付いた方がいたら嬉しいですね。

●出臼 巡、明奈
 苗字で気付く方もいるでしょうけど、名前の由来は「デウスエクスマキナ」です。出臼・巡・明奈。日本語にすると「どんでん返し」というわけで。

 いつもなら序盤で過去回想を入れて、主人公の歪みの原因を書くのですが、今作ではシナリオ上、それができないので困りました。母にはきつく当たられ、父は無関心、そして妹は母に同化しているので行き場がない……辛い境遇ですね。本編ではなぜか書いていませんが、巡が高2、明奈が中3の設定です。

●茂家 遥香
 名前の由来は、ギリシャ神話の運命の女神「モイラ」と、ローマ神話の運命の女神「パルカ」。あっさりと付き合えたのは夢だから。どうやっても上手くいかないのは、本当は付き合えていないから。

 当初は自殺させる予定があったので、友達が少なく、依存しがちな性格になっています。峰色への稔呼びを出臼は嫌がりますが、出臼には自分たちが名前で呼び合うことはできません。また「好き」と言われる想像もできませんでした。

●峰色 稔
 名前の由来は、ギリシャ神話の夢の神「オネイロス」と、北欧神話の運命の女神「ノルン」。出臼は劣等感ゆえに峰色の存在を抹消してしまいました。存在を消すのは廻船ではなく出臼だったという話。

 主人公の成長物語において起こりうる「友人のほうが魅力的」という問題を、そのまま嫉妬と羨望の対象に落とし込んだものです。想い人が友達と付き合うのは、まあ地獄でしょうね。

●廻船 傘音
 名前は読み通り「世界線を重ねる」。胡蝶の夢とか邯鄲の枕とか込めたかったけど無理だった。コテコテの性格で「こんなヤツ、実際いないだろ」と思わせて、本当にいないのです。

 峰色を死なせた(ことにした)自己嫌悪から逃げたくて「何かのせいにしたい」と思っていたところに現れたので、出臼は全てを押し付けてしまいました。実際には単なる転校生なので可哀想ですね。

 出臼の葛藤を具現化した存在で、要するに脳内会議の相手です。人をフルネームで呼ばわる彼女は何でも知っているように見えますが、出臼の知らない少年の名前は呼べません。

あまり細かく解説するのも違うと思うので大枠だけ。

このためだけに閉じる機能を作りましたが、まあ、また何かで使うでしょう。ページを開いた瞬間に閉じる動作が見えるかもしれませんが、jsはなるべく使いたくないので妥協です。